過重労働重点監督の結果報告

労働

法令違反の内容

昨年9月に厚生労働省が「過重労働重点監督月間」として若者の使い捨てが疑われる企業に対して集中的に実施した「過重労働重点監督」の結果が12月に公表されました。
今回は是正内容の事例紹介と解説、そして個人的な感想をご紹介させていただきます。

◇重点監督の実施事業場:5,111事業場
◇違反状況:4,189事業場(全体の82%)にて何らかの労働基準法違反が発生

違法な時間外労働

件数:2,241事業場

【事例】

長時間労働等により精神障害を発症したとして労災請求があった事業場で、その後も月80時間を超える時間外労働が認められた例

【解説】

精神障害を起こす条件は個人の耐性などにより異なりますが、労働時間が延びることにより精神障害を引き起こすリスクは確実に高くなります。
今回は労働基準監督署の調査ですが、今後は会社を相手取った訴訟等のリスクにも会社側が対応する必要性が出てきます。

賃金不払いの残業

件数:1,221事業場

【事例】

約7割にも及ぶ係長以上の者を管理監督者として取扱い、割増賃金を支払っていなかった例

【解説】

企業内で定める「管理者」と、労働基準法で定める「管理監督者」は要件的に異なっています。
なかなか中小企業で管理監督者へ該当する方と言うのは稀になります。
賃金の不払いが認められると時効2年まで遡り賃金を支払う可能性が出てきます。

過重労働による健康障害防止措置が不十分

件数:1,120事業所

【事例】

月100時間を超える時間外労働が行われていたにも関わらず、健康確保措置が講じられていなかった

【解説】

時間外労働は月45時間を超すあたりから徐々に健康障害へのリスクが高まっていきます。
会社は労働者の労働時間を管理し、時には医師による面接指導を行う等の労働者の健康を守る措置を取る義務があり労働時間が伸びることにより労働者の健康リスクは確実に増加しますので会社として何らかの対策を取る必要があります。

労働時間の把握方法が不適正

件数:1,208事業場

【事例】

労働時間の管理が適正に行われておらず、また算入すべき手当が割増賃金の計算に含まれていないことにより残業単価が低く設定されていた

解説

会社は年棒制や裁量労働制と言う賃金、労働体系を取っていても労働者の労働時間を把握する義務が生じています。
また、割増賃金に含まれる手当と含まれないものには線引きがあり、各個人の残業代までを想定して給与額を試算する必要があり、賃金全額払い違反を問われた時に大変なのがやはり2年前まで遡り精算する可能性があることです。

今後、違反や問題が認められた事業場に対しては「是正勧告」を交付するとともに指導を行い、それでも法違反を是正しない事業場に関しては「送検」を視野に入れて対応していくとのことです。

広報を見ての感想

今回の重点監督は内容を見ると若者の使い捨ての観点よりも監督署の行う調査なので労働基準法の法違反を是正していると言う色合いが強いように思いました。

やはり将来の社会の担い手となる若者世代の労働環境は大切ですし、会社側もどのようなことが法違反になるかを「知って」事前に対策をすることが結果的に不幸な状況を避けるうえで大切だと思いました。

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